画集掲載 No.12「脳を駆ける」
1995年 紙に墨、マーカー 38.6 × 26.6 cm

Publish No.12 " Run on the Brain "
1995 Oriental ink, marker ink on paper 38.6 × 26.6 cm



当時、伝統の意味での墨で、あえてラクガキ的に、叩きつけるように、
すばやく絵を描くようにしていました。
紙に墨が広がっていくと、どう描いたら良いかわからなくなっていた
それまでの頃、同時に抱えていたさまざまな不満や悩みまでも、
吹き飛ばしたような、爽快な気分になれました。

そのうち、色も着けたいと思うことが増えてきました。
しかし絵の具で描くと、せっかく描いた墨がにじんでしまう。
絵の具に手を出すとアカデミックな絵になってしまうという
思い込みがあって、それは嫌でした。

そんな時、アルバイトで色々な仕事をしてきた時、
どんな仕事現場でもマジック(マーカー)がよく使われていたのを思い出しました。
段ボール箱に、値札に、ポスターにと色々なところに書くのに使われていました。

社会のあちこちで、気軽に実用的に活かされるマジックに無骨さを感じ、
これこそ現代に生きる自分にあった画材だと思いました。
そうして墨で描く絵に、次第にマジックで着色することが増えていきました。


墨とマジックで描くことに、それなりにノウハウが蓄積され、
そういった絵をやがて「墨マ画」と命名しました。
初の個展は、この墨マ画の発表でした。

何年後かに、保存性について考えるようになると
また違う技法を探し求めるようになっていくのですが、

今でも色を選ぶときは、絵の具であれ、コンピューター・グラフィックであれ、
マジックで使っていた十数種の色をもとに、
それに近い色から選んでいくようにしています。

僕のその後の絵の基本となっているのが、この「墨マ画」なのです。


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